本屋と二次元のはざまブログ

とりとめのない備忘録

漫画の感想「辺獄のシュヴェスタ」

こんばんは、うんちょすです。

クーラーがなくてもなんとか日中を過ごせるようになったので、少しずつ秋に近付いているのかなあと思うと嬉しいです。このまま早く秋になれ。

 

さて、今回は前回の最後に言ってた漫画の感想を書きたいと思います。

「辺獄のシュヴェスタ」(作:竹良 実)

 

辺獄のシュヴェスタ 1 (ビッグコミックス)

辺獄のシュヴェスタ 1 (ビッグコミックス)

 

 

発売日は6/17なのですが、とても面白かったので感想を書きたいと思います。

 

舞台は16世紀のヨーロッパ、魔女狩りの時代。

魔女狩りによって天涯孤独となった主人公の少女・エラの復讐劇です。

魔女の子どもたちだけが集められる修道院『分水嶺』で、少女たちに行われる『奇跡』。

その秘密を知ったエラ、カーヤ、ヒルデの三人は、絶大な権力を誇るどう修道会に立ち向かっていくのか。そして、修道会を率いる総長・エーデルガルトの目的とは?

 

この作者さん、これが初連載とのことですが、とにかく綿密に取材をしているように思います。中世ヨーロッパという時代の雰囲気が一コマ一コマから伝わってきます。

ただ、拷問の描写、修道院内での鞭打ちとかその他諸々も結構ガッツリ描かれているので、少しグロ耐性があったほうがいいと思います。

 

生まれ変わるんだったら絶対避けたい時代BEST3に入る中世ヨーロッパ。餓死もペストも怖いし宗教戦争とかもっと怖い。

同時代を舞台にした映画・小説といえば、私は「薔薇の名前」くらいしか見たことがないのですが、あの映画で修道院という場所がいかに閉鎖的であるか思い知らされました。

薔薇の名前」の修道院は、確か山の中だった気がします。あと全然中世ヨーロッパじゃないんですけど、山の中の修道院を舞台にした小説に「展翅少女人形館」*1というものがあります。

話が逸れましたが、「辺獄のシュヴェスタ」の修道院も二つの川の分水点である「黒い森」の峰の中にあり、それゆえ『分水嶺の城』と呼ばれています。巡礼者も訪れるとのことですが、おそらくそんなに便利なとこにはないでしょう。

そして教会内で行われる『奇跡』。立地的にも環境的にも、その仕組を隠すことや、もみ消しも簡単にできるわけです。

閉鎖的な場所、環境で行われる「秘密」の「隠蔽」は、何も漫画の中の話だけではありません。現実社会でもフツーに起こり得ることですよね。道理的には正しいことが歪められて、本来は「おかしい」ことがまかり通ってしまう。大多数の人はその場の空気を読んで受け入れてしまうけど、それに歯向かい、反抗の機会を虎視眈々と狙う人が一人くらいはいる。

それが、この漫画におけるエラなんだと思います。

作者さんは巻末コメントで「読むとなんだか強気になれる」漫画にしていけたら、と仰っています。エラくらいまでいくと強気どころじゃなく狂気すら感じますが、勇気はもらえると思います。

実際、ネズミを木の杭の罠で串刺しにしたり、ケンカ売ってきた悪ガキをガチで殺そうとしたり、自らを壊死寸前に追い込んだり、そんな溢れる行動力を持った主人公です。ただ、エラの激しい行動は全てに理由があります。本能的に暴れてるのではありません。彼女なりの哲学を持ってやっている。こういうところがすごく好きです。ぜひ復讐を遂げてもらいたいですが、どうなるんでしょう・・・。

ちなみに、キャラクターだとちょっとドジっ子なヒルデが好きです。かわいい。死なないでほしい(切実)。キャラデザだと完全にカーヤとエーデルガルト様が好みです。

 

魔女狩りに興味のある方にはもちろん、歴史ものが好きな方にはぜひおすすめしたい漫画です。日本でもヨーロッパでもいいから骨太な歴史漫画が読みたい!と思っていた私には大満足な漫画でした。

 

スピリッツの公式サイトに第一話の試し読みがあるので、ぜひ読んでみてください。

spi-net.jp

 

次巻は11月とのことで、今から待ち遠しいです!

予約しておこう。

*1:瑞智士記作のSF小説。なぜか球体関節人形しか生まれなくなった近未来、奇跡的に「人間」として生まれた三人の少女をめぐる「頽廃ゴシックファンタジー」(byアマゾンのあらすじ)。かなり人を選ぶ内容ですが美少女たちの百合が好きなら読んでもいいんじゃないかな